ナビとドライバーの話し

我が道を行くマダムドライバーとの3時間ドライブ

行き先を伝えるだけで目的地まで連れて行ってくれるタクシー。

電車よりも割高とはいえ、疲れていたり荷物が多かったりする時には便利ですよね。

そんなタクシーですが、ごくまれに予定通りにいかない事もあります。

たとえば、1時間弱で着くはずが3時間もかかってしまったらビックリですよね?

今からお話するのは、我道を行くマダムドライバーの話です。

 

初めての出向

私は長野県にある企業に、2週間出向することになりました。

出向とは、現在勤めている企業(出向元)に籍を置いたまま、別の企業(出向先)で働くことです。

初めてのことだったので不慣れな点もありましたが、出向先の方々は皆さん優しく、快く迎え入れてくださいました。

そのまま大きなトラブルもなく2週間を無事に乗り切り、無事に出向を終えます。

心身共にヘトヘトでしたが、気持ちよく帰路につきました。

 

激しい雷雨の帰宅時間

帰りの新幹線を下車したのは18時ぐらい。

そこから自宅へは、在来線に乗り換え1時間ほどです。

外はものすごい雷雨になっていましたが、乗り換えは駅を出ずにできるので、そのままホームに向かいました。

ホームに着くと、かなりの混雑。

ちょうど帰宅時間ではあったので多少は覚悟していましたが、それにしても人が多い。

何かあったのかとスマホで運行状況を調べると、雷雨の影響で遅延や運休が出ていました。

途中で1回乗り換えるのですが、その乗り換える電車も落雷の影響で運転を見合わせています。

 

スーツケースを持って満員電車に乗るのはキツイ。

何より初めての出向で疲れているし、翌日も仕事がある。

弱気になった私は、2週間頑張ったんだから贅沢をしてもイイよね、と自分に言い聞かせタクシーで帰ることにしました。

 

ナビをガン無視マダムドライバー

タクシー乗り場に着くと、数台のタクシーが止まっていました。

雷雨で電車の運行にも影響が出ているため、少し並ぶかな?と思ったのですが、すぐに乗れそうです。

先頭に止まっていたタクシーのドライバーさんは、ご年配のマダム。

長距離を嫌うドライバーさんもいると聞くので、乗車する前に確認しました。

 

「長距離なんですが大丈夫ですか?」

「え?」

「長距離なんですが…」

「え?」

 

私の声は小さくないのですが、マダムは少々耳が遠いのか、何度か聞き返された後「大丈夫よ」と言ってくださいました。

 

(本当に大丈夫かなぁ…でもカーナビも付いてるし大丈夫だよね)

 

目的地を伝える際も数回聞き返されましたが、私もナビのモニターを一緒に確認して無事に入力できました。

少し不安に思いつつも、案内ルートが表示されたのでもう安心。

疲れていたこともあり、発車してからは車窓の景色をボーッっと眺めていました。

数十分たった頃、異変に気付きます。

 

(あれ?ここさっきも通らなかった?…いやでも知らない道だし気のせいかも)

 

数分後

 

(いや!やっぱりさっき通った!!何してんのマダム?!)

 

マダムは何故か同じ道をグルグル回っていたんです。

道に迷ったのかと思ったのですが、ナビがあるので迷うはずありません。

ナビの案内はどうなっているのかモニターを見てみると衝撃の事実が。

 

マダム、ナビをガン無視!!

 

全然違う道を走って、同じところを周回してました。

まさかボッタクる気か?!と思い声をかけようとしたら「ナビがおかしいのよ~」と。

 

「雷のせいでナビがバカになっちゃったみたい」

「さっきから同じとこ回されちゃうのよ」

 

結論から言うと、ナビは壊れていません。正常です。

では何故マダムはナビを無視するのか?

答えは道案内のルート以外に、目的地の方角が表示されていたからです。

マダムも途中まではナビ通りに進むのですが、目的地の方角と反対方向に案内が出ると、ナビを無視して目的地の方向に進んでいました。

しかし一方通行の道や、脇道の無い一本道に入ってしまい、結局元の道に戻っていたのです。

そのためナビは一時的に目的地とは逆方向を示していただけなのですが、マダムはナビが間違っていると思ったのでしょうね。

かたくなにナビを無視し続けて、抜け出せなくなっていました。

 

3時間でようやく帰宅

ナビに従わないと一方通行などで元の場所に戻されると伝えても、なかなか納得しないマダム。

このままでは本当に帰れないので、私も必死に説得しました。

 

「とりあえず1回ナビ通りに行ってみましょう!」

「そぉ~?」

 

私がしつこく言うのでマダムもしぶしぶですが了承してくれて、なんとか先へ進むことができました。

しかしその後も目的地の方角から離れそうになると、ちょいちょいナビを無視するマダム。

途中でメーターは止めてくれましたが、出向帰りで疲れていたのに、さらに疲れてしまって限界でした。

 

「あ、そこのコンビニでもう大丈夫ですよ」(なるべく明るく言いました)

「いやいや、ちゃんと家まで送らせて?ね?」

 

おそらく善意だったのでしょう、とても申し訳なさそうにおっしゃったんです。

私は本気で降りたかったのですが、善意で「家まで送りたい」と言われてしまうと強く断ることもできません。

結局そのまま自宅まで走ってもらいました。

度々ナビを無視するマダムを軌道修正しながら、なんとか自宅に到着。

 

出発は18時。到着は21時。

 

3時間!!

 

本来であれば車で45分程度の距離が、3倍以上の長旅になっていました。

 

以上が後にも先にも無い、3時間もタクシーに乗ってしまった話です。

この記事を書きながら当時のことを思い出していたので、現在、とても疲れています。

今にして思うと無理にタクシーで帰ろうとはせず、ビジネスホテルに泊まった方が良かった気がします。

 

体力的にも、金額的にも。

 

とはいえ貴重な体験であったのは事実なので、今ではイイ話のネタになっています。

皆さんも、知らない道ではしっかりナビに従って、確実に目的地を目指しましょうね!

 

asano111著