ビリケンタクシーの話し

幸運を運ぶビリケンタクシー ~大阪の街を彩った黄金の笑顔~

幸運を運ぶビリケンタクシー ~大阪の街を彩った黄金の笑顔~

大阪の街に特別な輝きをもたらした「ビリケンタクシー」。2015年3月、大阪タクシー協会によってユニークな取り組みが始まりました。通天閣の守り神として親しまれるビリケンさんを車体に乗せ、幸運を運ぶメッセンジャーとして街を走り始めました。

当時、2万台以上ある大阪のタクシーの中でビリケンタクシーはわずか39台。この特別なタクシーは、「見たら小吉、乗ったら大吉」と言われ、出会えただけで幸運が訪れると話題になりました。金色に輝くビリケン像を屋根に掲げ、大阪の街に笑顔と希望を運び続けた、そんな魅力的な話をご紹介します。

1. はじめに

大阪の街を走るタクシーの中で、特別な存在として愛されていたビリケンタクシー。2015年3月、大阪の観光を盛り上げ、タクシーをもっと身近に感じてもらうために誕生しました。

大阪のシンボル「通天閣」で親しまれている幸運の神様・ビリケンさん。
まさにビリケンさんをモチーフにしたこのタクシーは、屋根の上に金色に輝くビリケン像を乗せて街を走り、多くの人々の注目を集めました。

大阪タクシー協会が始めたこの取り組みは、大阪らしい遊び心とおもてなしの心が込められた新しい観光の形として話題を呼びました。

2. ビリケンタクシーの特徴

ビリケンさん

ビリケンタクシーは、一目で分かる特別なデザインが特徴です。屋根には高さ約20㎝の金ピカに輝くビリケン像が乗っていて、車体の側面には可愛らしいビリケンさんのステッカーが貼られています。

大阪には2万台以上のタクシーが走っていますが、ビリケンタクシーはたった39台(24社)しかありません。そのため、街で見かけること自体がとても珍しく、「ラッキー!」と感じる瞬間になります。

さらに、運が良くビリケンタクシーに乗ることができた人には、素敵な特典がありました。乗車した記念として、特別なカードがプレゼントされるのです。このカードを集めると、素敵な賞品がもらえるキャンペーンも実施されていました。

当時はツイッターなどのSNSでも、その記念品を手にした旅行者の「喜びのメッセージ」を見かけました。大阪に住んでいるとタクシーに乗る機会が少なくて少し残念です。

3. ビリケンについて

ビリケンさんの足のうら

ビリケンは、1908年にアメリカの女性芸術家フローレンス・プリッツが夢の中で見た不思議な姿の神様がきっかけで生まれました。にっこりと笑顔を浮かべ、足を組んで座る愛らしい姿が特徴的です。

1911年(明治44年)に、大阪の繊維会社が商標登録をして販促品や商品キャラクターとして使用されました。
初代ビリケン像は1912年(大正元年)にルナパーク(大阪の新世界の遊園地)に置かれて名物になりました。1923年(大正12年)にルナパークが閉鎖されたあとは、行方不明になっているそうです。現在のビリケンさんは三代目。
ビリケンさんは三代にわたり100年以上もの間、大阪のシンボルとして愛され続けています。

私は、二代目の最後の年に足の裏をなでに行きました。まるで甲子園球場が建て替えになるくらい淋しい気持ちになったのを覚えています。

ビリケンさんには「足の裏をなでると願い事が叶う」という言い伝えがあります。通天閣の展望台に座るビリケン像の足の裏は、多くの人々が触れたことで、ピカピカに磨かれています。(これは人気の勲章です。)「笑う門には福来たる」という言葉のように、ビリケンさんの笑顔は見る人に幸せを運んでくれると今も信じられています。

4. 利用者の体験談

実際にビリケンタクシーを利用した人の感想を探してみました。

このツイートの他にも、
通勤途中に金色に輝くビリケンさんを見つけて思わず笑顔になり、その日のいろんなことが上手くいって、とてもラッキーな1日を過ごした人もいます。

ビリケンタクシーに乗った家族のブログには、「子供が大喜び。記念カードをもらって、今でも大切な思い出として残っています」と書かれていました。

私も遭遇したことが何度もあります。
朝の通勤途中、北浜の堺筋沿いでよく見かけたビリケンタクシー。憂鬱なときでも、タクシーの上に鎮座したビリケンさんを見るとつい口元が緩みました。

「見たら小吉、乗ったら大吉」という言葉には、ビリケンタクシーを見かけただけでもちょっとした幸運、実際に乗れたらもっと大きな幸運が訪れるという意味が込められています。実際に多くの利用者が、ビリケンタクシーとの出会いを「その日の幸運のしるし」として楽しんでいました。

5. ビリケンタクシー運行の終了


いつの間にか見かけなくなったビリケンタクシー。気になったので調べてみたところ、2017年3月25日に運行を終了していました。
たった2年間という短い期間でしたが、大阪の街に明るい話題を振りまいてくれました。

運行期間中、ビリケンタクシーは大阪の観光PRにも大きく貢献しています。観光客にとっては「大阪らしさ」を感じられる楽しい思い出となり、SNSでの写真投稿も多く見られました。

私たち大阪人からも「通勤途中に見かけるとラッキーな気分になれた」「子供たちが喜んで指さしていた」「幸せな気持ちになる」といった声がたくさん聞かれました。
間違いなく、大阪の街に温かい笑顔を運ぶ存在として親しまれていたのです。
今でも「あのタクシーを見かけた日は良いことがあった」と懐かしむ声が聞かれます。
もし、ビリケンタクシーが復活してるのを見かけたら、仕事をサボって地元大阪観光をしてみたいと思っています。

haruka_moon-9著